サブカルで自己防衛してたOL(25)が「三代目JSBが好き」と言えるようになった結果、中学生の自分を救えた話

※2018年1月7日にnoteで公開した内容です。


三代目J Soul Brothersが好きです」――この一言をいうのに11年かかりました。

え、「結成は2010年11月10日でしょ」って? もちろん分かっているのですが、三代目ってメインカルチャーですよね。私はこの「メインカルチャー」にずっと拒否感と嫌悪感と、そして「好きになってはいけない」という感情を抱いていました。

私は関西の田舎育ちで、中学校のスクールカースト上位はヤンキーとギャルでした。彼ら彼女らが好きなもののひとつは“流行りモノ”。携帯電話は持っていたけど、まだ一般人の彼らはメールと電話と、できたばかりのモバゲーくらい。情報源はテレビか雑誌です。

そしてふたつめは“いじめ”。少しでも人と違う行動をしている人を指さして「何やってんの、ウッザ」「本当死ねばいいのに」などと言っていました。今なら反射的な、「今日寒い」「体育ダルイ」くらいの重さしかない言葉だったと思えますが、当時の私は真剣に受け止めていました。

お分かりの通り、私はオタクグループに所属していました。テニプリの不二先輩が実在しないと理解したときは1週間くらい無気力になったほどのオタクです。当然、誹謗中傷のターゲットです。

彼女らと目が合えばクスクス笑われ、体育でいい成績を出せば「目立ちたがりキッモ」と言われ。でも彼女らに「勉強も運動も出来ないのになんでそんな偉そうなの?」とか言えば、自殺したも同然です。ヤンキーとギャルの、上級生とのパイプが怖かった。ぶっ殺されると思ってた。

だから、彼女たちが好きなものを「嫌う」ことでしか自分を守れませんでした

ちょうどそのとき、14歳の私は、知り合いのお姉ちゃんからTHE BACK HORNを教えてもらいました。BUMP OF CHICKENは知っていたけど、ストレイテナーBEAT CRUSADERSART-SCHOOLSyrup16g……いわゆるロキノン系の音楽のレコメンドを受けて、沼に沈むようにハマりました。

オタクの怖いところは、一度好きになるとドップリ愛しこんでしまうこと。ロッキングオンジャパンや音楽と人を買って端から聴くに飽き足らず、BOOK-OFFで昔の音楽雑誌を買い占めて、知らないバンドで気になったものは全部聴いていく(スーパーカーとかスパルタローカルズとか)。

さらに2ちゃんや個人サイトを巡回し、趣味が素敵な人がオススメしているバンドは全部聴いていく(クラッシュインアントワープワタナベフラワー戸川純INU、ザ・スターリンラムシュタインとか本当に無節操に、でも偏って聴いていました)。

トップチャートに来るようなものは一切遮断して、地元の同級生が知らない音楽ばかり聴いていました。それはいつしか「こんな素敵な音楽を知らないの?」という優越感に変わります。

「世の中、『みんな大好き!なかよし!らぶらぶ!』みたいな薄っぺらい歌が流行る中、私だけが時代に左右されず高尚な音楽を聴いている。曲を作る彼らが、真剣に生き方と向き合った本当の音楽を知っている」

今思えば、「邦楽ロックしか聴かないくせに何恥ずかしいこと言ってんだ!」と死にたくなりますが、サブカル街道を走らなきゃ、自尊心が保てなかったんです。おまえらとは違う、私はおまえらみたく浅はかな人間じゃない。彼女たちが知らない音楽を聴くほど、自信になりました。

大学時代は学校が楽しすぎて、それほど音楽は聴かなくなりました。でも芸術系だったので勧められる音楽はボガンボス、フィッシュマンズ、やっぱりサブカルです。とても快適な4年間でした。いままでの屈辱や惨めな思いが報われた気がしました。

しかし2016年、社会人2年目の夏に、映画『HiGH&LOW THE MOVIE』(以下、ザム)に出会いました。SNS中、「ハイロー、バカにしてたけどやべえ」「まじパねえ」「琥珀サアアアアン」です。でもエグザイルでしょ?(笑)と思いながら映画館に行ったのですが、

「まじパねえ。スゲエ。琥珀サアアアアン!!!!」

もうハイロー説明するのに語彙が消えた。IQが3になった。それほど最高な映画でした。中学でよしもとばなな江國香織から、谷崎潤一郎坂口安吾堀口大學の文体にハマった私が。言葉こそすべてと思っていた私が、パねえスゲエしか言えなくなりました。

でも最近まで「ハイロー面白い」と言えませんでした。いや言ってたけど「いや~エグザイル(笑)なんですけど面白いんですよ~」みたいな勧め方をしていました。最低。でもこれは癖です。メインカルチャーの台頭、LDHを好きだなんて今までの自分を裏切る気がして言えませんでした

ザム観て、ドラマシリーズ1期観て、映画2作目のレドレ観て、ザム2観て、いやこれまじパねえわってなって、ザム3観て、パルクール始めて、友人もハイローハマって、ドラマ2期観て、友人たちと一緒に応援上映行って、ハイローカフェ行って、部屋の壁一面ハイローポスターになって……中の人たち、LDH、特に三代目J Soul Brothersに興味の矛先が向かいました。

まずメインカルチャーの何がすごいって、供給量がすごい。ファンが多いからいろんな情報やコンテンツが放出されてる。三代目さんは追おうと思ったら約7年分の足跡が楽しめます。へー登坂さんは元々美容師・アパレルさんだったんだ、ガンちゃんさんは慶應なのか。

ちょっと話がそれますが、私は闇属性のサブカルなのでメンヘラ気質です。でもバンドマンもメンヘラ多いじゃないですか。歌が書けない、歌えない、悩んでる、いやだ、苦しい。彼らの生々しさに共感したし、大好きです。でもそれって不安定なんですよね。

ついにライブ映像を観ました。なにこれ。こんな最高のショー、観たことない。

すごいんですよ、安定感が。パフォーマーは何時間も躍り続けてるのに笑顔だし、ボーカルはCDか!ってくらいキレイに歌う。「今日は〇〇、ミスらないかな?」とかそんな不安感が一切ない。何よりあの舞台セットと演出、そして祝祭感、興行物として最高ではないですか? 

今までLDH系のアーティスト、聴かず嫌いしてました。でも知れば知るほど、彼らのストイックさを思い知ります。ひとつのパフォーマンスに打ち込む姿は職人そのもので、私が愛した音楽に愚直なバンドマンと同じです。

チャラッチャラした「エグザイル“系”」は苦手です。でも“系”のヤツらと、LDHのアーティストは全くの別物です。私をいじめたチャラッチャラした彼女たちが王道の、つまり三代目J Soul Brothersが好きだとしても、三代目と彼女たちはまったく違うものなのだと、やっと気付きました。

自己防衛で「サブカル」と定義して、「サブカル以外を好きな私は私じゃない」と自分を縛っていました。でもどんなきっかけであれ、サブカル的な音楽を好きなことは事実だし、音楽を聴きまくったことで救われました。不安定なときもあるけど、最高な瞬間だってたくさんあります。

だからいままでの自分を否定することなく、本当に、心の底から「三代目J Soul Brothersが好き」といえるようになったことで、やっと中学生の自分を救えたのだと思っています。

だから、って訳じゃないんですけど、しばらく三代目さん三代目さん言うと思うのですが、温かく見守っていただけると嬉しいです。いや本当に三代目さんすげえの……三代目さんの歌、オタクはどハマりする素養あると思うの……。それについてはまた今度書きたいです。